縄文時代の中期の中頃から後半にかけて、縄文土器はいっそう多様で複雑な構成になる。土器全体が重想文で埋め尽くされている土器が増えるのもこの頃である。
この土器は昭和50年代の初期に20円はがきのデザインとなり、全国に知られる土器である。巨大な把手は水煙と考えられていたこともあり、水煙土器とも呼ばれている。胴部には畑と蛇が配置され、胴部中央より上に向かって植物が繁茂している様子を表現した巨大取手が2ヶ装着されている。土器の中央には女性人体文が組み込まれている。下から根菜文と重想された男根がつきだしている。女性の頭の部分は口縁部に二重円文で表されている。
優雅で力強い造形に秘められた畑作の豊穣と集落繁栄の祈りである。
土器全体を母親の母体に見立て、へその緒のついた子どもがまさに出産した様子を抽象化して表現している。土器の裏面に子どものへその緒がとれて円満に出産が終わった様子を示し、穀物文土器や母子唐草文土器と同様に正面と裏でそれぞれ出産を時間経過に従って文様化している。『安産と子どもの生誕を祝い、母子ともに健やかに育ちますように。』
未来への希望−土器文様は10,000年の時空を超越する。
畑の豊穣と安産の願い。まかれた種が無事に結実し、さらに繁栄してほしいという願い。
口縁部には巫女の顔面把手が配置され胴部を母体に見立て、産児が顔を覗かせている。胴部にはさらに蛇文で囲まれた半月領域の畑文が並び、その中には「豊穣」を示す渦巻文があり、さらに蛇文が双環をぐるりと取り巻いて畑と母子を護っている。側部には底部から伸びる綾杉隆帯と女性を示す円文のリングが波形の文で結合され、「交合」を示している。さらにその上には「和合」を示す三角文と渦巻文のペアが配置されている。 彼らの理想とする人生観の表現であり、巫女を中心とした集落繁栄の象徴でもある。