第2回 国宝土偶に高度な装飾記号

 前回は縄文土器が世界一であることをご紹介しましたが、縄文時代といえば土器だけでなく土偶を思い浮かべる方も多いと思います。
 この土偶は、縄文のビーナスと呼ばれる長野県茅野市棚畑遺跡から発掘された国宝の土偶です。

棚畑遺跡 土偶 茅野市尖石縄文考古館

頭を横から見ると渦巻きが見えます。

渦巻きが細く刻まれています。


 頭の前部分と耳部分が彫り込まれていますが、渦巻き寄りの輪郭を意識すると、渦巻きの余白部分が太い浮き彫りに見えてきます。

 すると三角の部分と渦巻きで妊娠の記号が現れます。

 余白の部分がいつのまにか形になっている。この絵のような効果です。

エッシャー 闇に向かう白鳥

頭の反対側を見てみましょう。

出産の記号があります。

もう1つ出産の記号があります。

 出産の記号が180度方向を変えて重なっている。2つの輪を入れ替えても出産の記号に見えるようなバランスで入れ子になっている。この絵のような視覚的効果です。

エッシャー 書く手

 そう言われてみればそう見える...よくあることです。ましてや今から5000年以上も前の縄文人が視覚的効果まで考えて記号を装飾したとは簡単には信じられません。

しかしそれを見極めるヒントが別の土器にあります。

前回ご紹介した海戸遺跡の顔面把手付深鉢ですが、

片側に妊娠の記号。

反対側に出産の記号。

正面から見ると妊婦。

もうお分かりですね。
片側に妊娠の記号。

反対側に出産の記号。

正面から見ると妊婦。

 まったく同じ構成であり、妊娠と出産の記号を効果的に使ってこの土偶は製作されています。

 視覚的な効果まで考えて記号を組み合わせて装飾にする。視覚の魔術師でもある彼らは縄文土器だけでなく土偶にも高い技術を駆使していたのです。

考古館でぜひ本物を見て下さい。

茅野市尖石縄文考古館

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