第3回 縄文記号とは何か

 第1回、第2回と縄文記号の実例をご紹介しましたが、今回は縄文記号とは何かということを説明したいと思います。
 まず最初に縄文記号が発達した年代と地域について、次に縄文記号にはどのような種類があるかについて、そして最後に縄文人は記号で一体何を表現したのかを説明します。

 縄文記号は今から5500年前~4500年前の縄文時代中期と呼ばれる約1000年間に発達しました。その1000年間の中でも特に約500年間は多くの記号が縄文土器の装飾として使われました。
 縄文記号が発達した地域は中部、関東地域を中心とするエリアです。その地域では勝坂式土器と呼ばれる土器がさかんに作られましたが、記号が装飾として多数使われていました。その当時は他の地域でも記号を装飾とした土器が作られていますが、意味を推測できるほど豊富な装飾例は勝坂式土器をおいて他にはありません。

 勝坂式土器の装飾には様々なバリエーションがあります。すべて記号として意味が明らかになっているわけではありませんが、大きく分けて男性記号と女性記号の2種類があります。
 男性記号と女性記号は表現方法によってさらに幾つかの種類に分けられますが、この講座では誰にでも解りやすいように省略系とリアル系という2種類に分けることにします。つまり、勝坂式土器の縄文記号は大きく4種類に分類できるということになります。

  • 男性記号 省略系

  • 男性記号 リアル系

  • 女性記号 省略系

  • 女性記号 リアル系

例えば、第1回、第2回の講座でご紹介した画像の記号は下記の種類に該当します。

 蛇     → 男性記号 リアル系
 フクロウ  → 女性記号 省略系
 妊娠の記号 → 女性記号 省略系
 出産の記号 → 女性記号 省略系

さて、当時の縄文人はこの4種類の記号を組み合わせて土器にいったい何を表現していたのでしょうか?

彼らが土器に表現していたことはこの3つです。

  • 男女が愛し合うこと

  • 子供に恵まれ無事に出産できること

  • 作物がたくさん収穫できること

 この3つは彼らにとって当たり前の出来事ではありませんでした。なぜなら、どのような文化でも当たり前だったことはあまり記録されないものです。むしろ、当たり前ではないけれど場合によっては実現可能なことが理想像として記録されるのです。
 彼らは縄文土器に理想的な世界観(縄文ドリームと言ってもいいのかもしれません)を記録し、それを特別なものとして扱ったのだと思います。

 私たちは、今まで縄文土器を見たときに、造形に迫力があると感じながら意味不明で奇妙な土器を作った彼らを原始的で呪術的で得体の知れない人間だと想像してきました。しかし記号の意味から考えると、彼らの理想とする世界観は現代の私たちでも理解できるものだったのです。

次回から4種類の記号と土器の装飾例を解説していきます。

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