前回の講座では、縄文土器の記号は男性記号と女性記号の2種類であり、それぞれリアル系と省略系に分けられ、その4種類の記号の組み合わせで彼らは理想とする世界観を表現しているのではないかということをお話しました。
 今回は、男性記号である蛇の記号についてリアル系と省略系を例示しながら説明したいと思います。
 
 蛇の装飾は男性を表す記号だとこのサイトでは考えています。なぜそう考えるのかというと、蛇と男性のシンボルをオーバーラップさせたと思われる土器や土器片があるからです。いずれも蛇の造形の脇に丸い突起がついているのが特徴です。


 長野県茅野市和田遺跡


 長野県岡谷市榎垣外遺跡

 このような土器や土器片はあまり一般的ではありませんし、ごくまれに見つかる程度のものですから、偶然そのように作られたという可能性もまったくないとは言い切れません。しかし、蛇が男性を意味していたと考える理由が2つあります。

・彼らはかなりの技術を駆使して土器を製作しているので、たまたま気まぐれや偶然でそう作ったとは考えにくい。

・当時の人々は蛇は男性を表すマーク(記号)だと当たり前のように考えていたからこそ蛇と男性シンボルがオーバーラップされた土器が少ないのではないか。つまり、あたり前に考えられていた事をたまたま製作者がより丁寧に表現しただけなのではないか。

 あくまでも推測からの理由づけですが、そう考えることで他のマーク(記号)との意味の整合性が出てきます。


 
 蛇の装飾はリアルなのものから、ほとんど蛇だとわからないぐらい省略されたものまで様々な種類があります。例えばこれはリアル系の代表的なものといえるでしょう。


長野県茅野市長峯遺跡

 次の黄色く囲んだ部分は、あまりリアルではありません。しかしこれも蛇だと考えており、青で示した玉抱三叉文と呼ばれる模様(このサイトでは女性・出産を表す記号と考えています。)とセットで配置されています。記号の意味としては男性と女性が愛し合い、その結果として出産を表していると考えます。このような記号の組み合わせは、勝坂式土器に装飾として数多く見られます。


長野県茅野市尖石遺跡

 これも同じ構成です。出産の記号と蛇がセットで配置されています。蛇に相当する部分には蛇らしい特徴がほとんど見当たりませんが、これも蛇を省略した装飾だと考えられます。


長野県富士見町曽利遺跡

 このように、蛇の記号はリアルなものから省略されたものまであります。省略系の記号にも様々なバリエーションがあると考えていますが、ここでは代表的なパターンをご紹介します。

・マムシの銭型模様以外を省略した記号例

山梨県笛吹市釈迦堂遺跡


長野県茅野市下ノ原遺跡

・蛇の口の特徴を生かした記号例


長野県茅野市中ッ原遺跡


長野県富士見町曽利遺跡

・蛇の頭部の特徴を生かした記号例

山梨県甲府市海道前C遺跡


長野県富士見町曽利遺跡

・構成上の約束と思われるような共通の蛇の配置の例

 確かに省略された蛇はわかりにくいのですが、パターンを理解していれば見つけ出すことができるようになります。そして当時の人々は蛇を男性の意味として女性の記号とセットで土器に使っており、それが縄文時代中期の勝坂式土器の特徴だと考えています。
 
 さて、いよいよ冬も本番になってきました。長野や山梨は一段と寒さも厳しい季節です。しかし、実は冬期こそ考古館で縄文の作品をゆっくり鑑賞できるシーズンです。下記の考古館の展示はいずれも縄文時代を代表する第1級品揃いです。是非あなたも週末に考古館で縄文記号を探してみてはいかがでしょうか。

長野県茅野市尖石縄文考古館
長野県諏訪市博物館
長野県岡谷美術考古館
長野県富士見町井戸尻考古館
山梨県笛吹市釈迦堂遺跡博物館
山梨県甲府市山梨県立考古博物館
南アルプス市ふるさと文化伝承館

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