女性が命がけで出産すること、母子ともに無事であることは彼らにとって最大のテーマだったと思います。もちろん今以上に死亡率は高かったはずです。
土器にはそのような女性の出産後の状態を表していると思われる表現があります。どのような表現なのかというと、女性系記号にへその緒を抽象化した隆帯や紐状の模様を連結するような表現です。
また、その表現は無事に作物が収穫できるという意味も込められていたのではないかと思います。つまり、無事に収穫ができて命をつなぐことができることと、無事な出産がオーバーラップしていたからこそ土器に出産後の場面が記されているのではないかと考えています。
例1 女性のこどもが生まれてくる部分を抽象化した造形に隆帯を連結して口縁部をぐるりと取り囲んでいる例。女性からへその緒が出て、無事な出産を表していて同時に収穫も表していると思われます。
例2 これも女性の、子供が生まれてくる部分の造形に隆帯を連結して、無事な出産を表現していると考えられます。子供が生まれてくる部分をカエルのような造形とオーバーラップさせているようにも見えます。
例3 一部破損していますが、こどもが生まれてくる部分の形状と隆帯を連結させて女性からへその緒が出ている状態を表現していると思われます。これも出産と収穫の表現ではないかと思われます。
例4 玉抱三叉文と蛇体文で男女が愛し合う(種まき)と出産(収穫)を表し、さらに逆三角形の隆帯に隆帯を下方に連結しているように見えますが、ちょっとわかりにくいですね。 でも反対側から見ると …
土器の口縁部にも隆帯が連結しています。彼らは土器そのものを母胎や栽培エリアを表したものと考えていたと思われますが、母胎から出産を終えて出てきたへその緒を隆帯で表現しているのではないかと考えています。
例5 これも土器を母胎に見たてて、口縁部からへその緒が出ているという構成になっていると思います。