前回は縄文土器が世界一であると述べましたが、縄文時代といえば土器だけでなく土偶を思い浮かべる人も多いと思います。
この土偶は、縄文のビーナスと呼ばれる長野県茅野市棚畑遺跡から発掘された国宝の土偶です。
頭を横から見ると渦巻きが見えます。
渦巻きが細く刻まれています。
頭の前部分と耳部分が彫り込まれていますが、渦巻き寄りの輪郭を意識すると、渦巻きの余白部分が太い浮き彫りに見えてきます。
この三角の部分と渦巻きがくっついた模様や造形は、渦巻三叉文(うずまきさんさもん)と呼ばれていて、このサイトでは妊娠を表す記号だと考えています。
余白の部分がいつのまにか別の形になっていますが、次のような絵でもそのような効果がつかわれています。
次に頭の反対側を見てみましょう。
この丸と三角は玉抱三叉文(たまだきさんさもん)と呼ばれる模様ですが、このサイトではこれは女性や出産や母親を意味する記号だと考えています。
もう1つ、逆向きの玉抱三叉文があります。
玉抱三叉文が180度方向を変えて重なっています。次のような絵にもなんとなく共通しています。
しかし、渦巻三叉文と玉抱三叉文という記号があると言われても、たまたまそういう模様に見えているだけかもしれませんし、今から5000年以上も前の縄文人がわざわざ記号を使って装飾を考えたとは簡単には信じられません。
しかし、次のような土器を見ると、それは偶然ではなく意図的に作られていたと思わざるを得ません。
前回ご紹介した海戸遺跡の顔面把手付深鉢です。顔面把手の裏側には妊娠を表す渦巻三叉文がありました。
反対側には出産を表す玉抱三叉文があります。
正面から全体を見ると、胴体が膨らんでいて妊婦を表していると思われます。
縄文のビーナスも同じです。片側に妊娠を表す渦巻三叉文があります。
反対側に出産を表す玉抱三叉文があります。
正面から全体を見ると妊婦です。
土器と土偶というまったく別のものなのに、記号の観点から見るとほぼ同じ構成です。
いずれも妊娠と出産の記号を使って「無事に妊娠して出産すること」を表そうとしていたのではないかと考えます。
彼らは、記号を組み合わせて、視覚的な効果まで考えた上で、土器や土偶に高い技術を駆使していたと考えています。